国外支店を有する場合の税務上の論点

近年グローバル化に伴い、海外に支店を有する法人が増えてきております。

そのため、今回国外支店を有する場合の税務上の論点について解説していきます。

 

1.法人税

①原則

内国法人は全世界所得に対して課税されます。

したがって、国外支店で発生した所得(又は欠損)も、内国法人の法人税の課税所得に含めて申告納税を行う必要があります。

 

②外国税額控除

内国法人の外国支店で、外国法人税額が課されている場合は、当該外国税額を、内国法人の日本の法人税額から差し引くことができます。

 

【外国税額控除と損金算入の有利不利判定】

法人は外国税額控除(外国税額損金不算入)と外国税額損金算入の選択が可能なため、課税所得が発生する内国法人は外国税額控除を採用した方が有利となり、課税所得が発生しない(及び今後も発生する見込みなし。)内国法人は、外国税額損金算入を採用した方が有利となります。

 

【外国税額控除の計算方法】

下記①と②のいずれか少ない金額が外国税額控除の対象となります。(①若しくは②の残りの部分は3年間繰越可能)

  • 外国税額
  • 控除限度額=法人税額×国外所得金額÷全世界所得金額

 

【外国税額とは】

日本の法人税、所得税に類似した外国税金のみ対象です。(海外の消費税みたいな税金は不可です)

 

【控除限度額の計算】

(イ)×(ロ)÷(ハ)で計算します。

(イ)法人税額

別表1(1)4欄の金額

 

(ロ)国外所得金額

下記①と②のいずれか少ない金額

  • 国外事業所等帰属所得+その他国外源泉所得※– 非課税国外所得(主に配当、株式譲渡益)
  • 欠損金控除前課税所得の金額×90%

※その他国外源泉所得とは、海外株式からの受取配当、海外貸付金からの受取利息及び海外からの受取使用料から国外費用を控除した金額です。

 

(ハ)全世界所得金額

別表4の欠損金控除前の所得金額

 

【国外事業所等帰属所得とは】

法法69④一号から十六号に記載されている所得※-共通費用-共通利子+資本対応負債利子

※実際は国外支店のPLをみて、当期利益に法人税法上の加減算を行い算出します。

 

  • 内部取引

法法69④一号から十六号に記載されている所得には、内部取引(日本の本店と海外支店との間の取引)を認識する必要があります。(当該内部取引の取引金額は移転価格税制の文書化の対象とされています。)

 

  • 共通費用

日本の本店で損金算入された販売費、一般管理費等の費用のうち、日本の本店と外国支店の業務双方に関連した共通費用があるときは、当該共通費用の額を国外事業所等帰属所得より減額する必要があります。

 

共通費用=双方で生じた販管費の額×外国支店の売上総利益÷全世界の売上総利益

 

  • 共通利子

日本の本店で損金算入された負債利子のうち、日本の本店と外国支店の業務双方に関連した共通利子があるときは、当該共通利子の額を国外事業所等帰属所得より減額する必要があります。

 

共通利子=双方で生じた負債利子の額×前期及び当期末の海外支店の総資産÷前期及び当期末の全体の総資産

 

  • 資本対応負債利子

国外事業所等に係る自己資本の額が、その国外事業所等に帰せられるべき資本の額に満たない場合には、その国外事業所等を通じて行う事業に係る負債利子の内その国外事業所等に帰せられるべき資本の額に満たない金額に対応する部分の金額を国外所得金額の計算上加算します。

 

資本対応負債利子=国外事業所等を通じて行う負債利子×(国外事業所等に帰せられるべき資本の額-国外事業所等に係る自己資本の額)÷国外事業所等に帰せられる負債の帳簿価額の平均残高

 

【地方法人税及び地方税の控除限度額】

地方法人税:法人税の控除限度額×4.4%

道府県民税:法人税の控除限度額×3.2%

市町村民税:法人税の控除限度額×9.7%

 

【控除の順序】

法人税→地方法人税→道府県民税→市町村民税

繰越控除限度額及び繰越控除対象外国法人税額は、発生年度の古い順、かつ同一年度については、国税、ついで地方税の順に控除

 

【外税控除適用時期】

原則として海外支店で申告があった事業年度

例外として納付することが確定した外国法人税を費用計上した事業年度

 

2.住民税

内国法人が外国支店を有する場合、外国税額控除の適用がある他、通常の住民税の計算と変更なし

 

3.事業税

①所得割

    法人税の課税所得から外国支店に帰属する所得を控除した金額が、所得割の課税標準となります。

     【外国支店に帰属する所得】

    (イ)国外所得を区分して計算する法人

    外国税額控除で算定した国外所得を外国支店に帰属する所得とします。

     (ロ)国外所得を区分することが困難な法人

    欠損金控除前の所得金額※×外国の事業所等の従業者の数÷従業者の総数

    ※法人税の計算で外国税金損金算入している場合は、外国税金を加算した金額を使用します。

     

    ②付加価値割

    収益配分額(報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料)+単年度損益-雇用安定控除額

     

    【付加価値割額の計算方法】(雇用安定控除額前)

    外国支店を有する法人の付加価値割額(収益配分額(報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料)+単年度損益)は以下の通り計算されます。

    (イ)国外付加価値割額を区分できる法人

    付加価値割額の総額-国外付加価値割額

     

    (ロ)国外付加価値割額を区分できない法人

    付加価値割額の総額-付加価値割額の総額※×外国支店の従業者数÷全従業者数

    ※法人税の計算で外国税金損金算入している場合は、単年度損益の計算上外国税金を加算した金額を使用します。

     

    【雇用安定控除額の計算方法】

    国外支店がある場合の雇用安定控除額の算定の際に用いる収益配分額及び報酬給与額は以下の金額となります。(雇用安定控除額=報酬給与額-(収益配分額×70%))

    (イ)収益配分額

    収益配分額の総額-外国の事業に帰属する収益配分額

    (ロ)報酬給与額

    報酬給与額の総額-外国の事業に帰属する報酬給与額

     

    なお、上記外国の事業に帰属する収益配分額及び報酬給与額の区分が困難の場合は、以下の通り計算した金額とします。

     

    収益配分額又は報酬給与額の総額×外国支店の従業者数÷全従業者数

     

     ③資本割

    外国支店を有する法人の資本割の課税標準は、以下の通り計算されます。

    (イ)(ロ)以外の場合

    資本金等の額-資本金等の額×国外付加価値額÷付加価値額の総額

    ※付加価値額は雇用安定控除前の金額

     

    (ロ)①国外付加価値額がゼロ以下の場合、②国内付加価値額がゼロ以下の場合、③国内付加価値額の付加価値額の総額に占める割合が50%未満の場合

    資本金等の額-資本金等の額×外国支店の従業者数÷全従業者数

     

    以上が国外支店を有する場合の税務上の取り扱いになります。

    海外絡みは潜在的に難しいと感じてしまいますが、要点さえ押さえてしまえばそこまで難しいものではありません。

    是非ものにして、今後の経営に活かしてください。

     

    また、私どもの方でご相談にのることも可能ですのでお悩み等御座いましたらお気軽にご連絡頂けますと幸いです。

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