今回のテーマは各種組織再編成毎に係る実施コストの比較をしていきたいと思います。
組織再編成をする場合に税制適格・非適格といった部分に目が行きがちですが、その他の事項の実施コストも金額として馬鹿にならないため、しっかり理解しておく必要があります。
消費税について
① 再編時の取り扱い
【合併・分割】
合併、分割における資産の移転は、包括承継であり資産の譲渡等に該当しないため、消費税は課されません。
【事業譲渡・現物出資】
事業譲渡や現物出資は通常の売買取引と同様に資産の譲渡等として消費税が課されます。またのれん(資産調整勘定)についても消費税を認識する必要があります。
【株式交換・株式移転】
株式交換や株式移転は消費税法上有価証券の譲渡等に該当するため、非課税売上を認識する必要があります。
② 課税事業者の判定
【合併】
合併法人の合併事業年度の納税義務は、合併法人の基準期間における課税売上高のみで判定するのではなく、合併法人の基準期間に対応する期間における被合併法人の基準期間における課税売上高を合算して判定を実施します。
【分割】
分割承継法人の納税義務は、分割承継法人の基準期間における課税売上高のみで判定するのではなく、分割承継法人の基準期間に対応する期間における分割法人の基準期間における課税売上高も加味して判定を実施します。
【事業譲渡・現物出資】
現物出資・事業譲渡についての基準期間における課税売上高の計算方法の特例は規定されておりません。
不動産取得税について
原則として、土地を取得した場合には固定資産税評価額×1/2×3%、建物を取得した場合には固定資産税評価額×4%について不動産取得税が課されます。
【合併】
合併により不動産を移転する場合には、包括的な事業の移転であるため、不動産取得税は非課税となります。
【分割】
会社分割も、包括的に事業の移転であることから、次の要件を満たす場合には非課税となります。
①金銭等不交付要件
分割承継法人株式以外の資産が交付されないこと
②按分型要件
その分割が分割型分割である場合、分割承継法人株式が分割法人の株式の株主等の有する分割法人株式の数の割合に応じて交付されること
③主要資産等引継要件
分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること
④事業継続要
分割に係る分割事業が、分割後に分割承継法人において分割後に引き続き営まれることが見込まれていること
⑤従業員引継要件
分割直前の分割事業に属する従業員のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が、分割後に分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること
【現物出資】
法人が新たに法人を設立するために現物出資を実施する場合には、次の要件を満たすときには、非課税となります。
① 現物出資法人が、新設株式会社の発行済株式等の総数の90%以上を所有していること
② 新設株式会社が出資株式会社の事業の一部の譲渡を受け、その譲渡に係る事業を継続して行うことを目的としていること
③ 新設株式会社の取締役の1人以上が出資株式会社の取締役又は監査役であること
登録免許税について
① 不動産の移転登記
原則として、土地を取得した場合には固定資産税評価額×1.5%、建物を取得した場合には固定資産税評価額×2%の不動産取得税が課されます。
【合併】
合併により土地、建物を取得した場合には固定資産税評価額×0.4%について不動産取得税が課されます。
【分割】
分割により土地、建物を取得した場合には固定資産税評価額×2%について不動産取得税が課されます。
② 商業登記
会社の設立、新株発行等による増資、組織再編行為を行った場合には、登記が必要になります。そのため、それぞれの登記について次の登録免許税が課されます。
・分割承継法人、株式交換完全親会社による資本金増加:0.7%(最低3万円)
・合併法人による資本員の増加:0.15%(最低3万円)
・合併消滅法人、分割法人:3万円
・株式交換完全親会社の発行済株式総数の変更:3万円
その他経費について
その他一般的な経費は以下の通りです。
・再編公告の官報掲載料:約4万円
・株券提出公告の官報掲載料:約4万円
・会社債権者に対する広告の官報掲載料:約6万円
・司法書士報酬:約50万円
以上が各種組織再編成毎に係る実施コストの比較になります。
なお、組織再編を行う場合は手続きや税務上の取り扱いに関して留意事項が数多くあるため、思わぬ落とし穴にはまらないためにも、進める際には専門家に是非ご相談ください。
貴社の力になれることを確信しておりますので是非ご相談ください。
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