事業承継税制の仕組みについて

近年、事業承継税制という言葉が世の中でブームになっています。

また、これに関して

「事業承継税制を使えば、相続税や贈与税は課されず後継者に移転できる。」

「この制度を使えば相続税が免除されるため、そのほかの事業承継対策は必要ない」

という話を良く耳にしますが、この意見は部分的には正解で、部分的には不正解です。

 

事業承継税制の活用をする場合は事業承継税制の内容をしっかりと理解して進めないと大きな落とし穴が待ち受けています。

そのため、ここでは事業承継税制の仕組みについて見ていきたいと思います。

まず、事業承継税制とは、後継者が先代経営者から贈与または相続により自社株を承継する際にかかる贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。(免除ではなく猶予です。

 

【適用要件】

事業承継税制の適用要件は、大きく会社の要件、先代経営者の要件、後継者の要件に分けられ、その主な要件は以下の通りです。

  • 会社の主な要件
  • 中小企業者であること
  • 上場会社でないこと
  • 風俗営業会社でないこと(カフェー、バー、パチンコ、ゲームセンターなどを営む会社を除く)
  • 資産管理会社でないこと(一定要件を満たす場合を除く)
  • 常時使用する従業員が1人以上いること
  • 先代経営者の主な要件
  • 会社の代表者であったこと
  • 本人と同族関係者で総議決権数の50%超を保有していたこと
  • 同族関係者の中で筆頭株主であったこと(後継者を除く)
  • 後継者の主な要件
  • 会社の代表者(相続の場合は相続後5ヶ月以内に就任)であること
  • 会社の役員であること(贈与の場合は就任から3年以上経過)
  • 本人と同族関係者で総議決権数の50%超を保有していること
  • 同族関係者のなかで筆頭株主であること(後継者1人の場合)

 

【手続き】

事業承継税制の適用に必要な手続きは、以下の通りです。

  • 特例承継計画を都道府県に提出(特例措置の場合)
  • 都道府県に事業承継税制にかかる認定申請書を提出
  • 税務署に申告
  • 認定を受けたあと5年間は毎年、年次報告書を都道府県に、継続届出書を税務署に提出
  • 5年経過後は3年ごとに継続届出書を税務署に提出

なお、事業承継税制の適用を受けるためには、担保を提供する必要がありますが、その適用を受けた自社株を担保とすることもできます。

 

【猶予税額】

事業承継税制により贈与を受けた自社株にかかる贈与税は全額猶予されます。相続税は一般措置においてはその80%が、特例措置においてはその全額が猶予されます。 

事業承継税制の適用を受ける会社が支配している外国子会社等の株式、医療法人の出資持分を持っている場合、その株式および出資持分を持っていなかったものとした株価により猶予額を計算します。

また事業実態要件を満たすことにより事業承継税制の適用を受けた資産保有型会社・資産運用型会社が上場株式の発行済株式総数の3%以上を持っている場合には、その上場株式を持っていなかったものとした株価により猶予額を計算します。

 

【取り消し事由】

事業承継税制の適用を受けるためには様々な要件がありますが、適用を受けた後においても満たすべき要件があります。もし要件を満たさなくなると、それまで猶予されていた税額について、利子税と合わせて納付しなければなりません。

適用後も満たすべき要件は大きく➀5年内(承継期間内)のみの要件と適用期間中継続して満たすべきものに区分されます。納税猶予が取り消される主な理由は以下のとおりです。

  • 5年以内(事業承継期間内)
  • 後継者が代表権を有しなくなった場合
  • 後継者および同族関係者の有する議決権数が50%以下となった場合
  • 後継者が同族関係者内で筆頭株主でなくなった場合
  • 会社が上場した場合
  • 常時使用する従業員数が5年平均で8割を下回った場合※特例措置においては一定の手続きを条件に猶予継続
  • 適用期間中(5年内も5年経過後も)
  • 後継者が株式を売却等した場合

5年内においては一部を売却等した場合にも全額猶予期限が確定。5年経過後においては、その売却等した部分のみ猶予が取消

  • 総収入金額がゼロとなった場合
  • 資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合

※事業実態要件を満たす場合は猶予継続。またやむを得ない理由により該当してしまった場合、その後6ヶ月以内に該当しなくなれば猶予継続

  • 資本金または準備金の減少をした場合
  • 継続届出書の提出を失念した場合
  • 一定の組織再編をした場合

 

【贈与から相続に切り替え時】

贈与から相続の事業承継税制に切り替える場合には、5年経過後であっても改めて次のような要件を満たす必要があります。

  • 代表権を有していること
  • 筆頭株主であること
  • 後継者および同族関係者で議決権数が50%超であること

 

【取り消し時の納付税額】

納税猶予が取り消された場合には猶予されていた税金を利子税と合わせて納付しなければなりません。なお5年経過後であれば当初5年間の利子税は免除されます。

5年経過後に譲渡した場合で「譲渡額または譲渡時の時価<猶予税額」のときは猶予税額との差額が免除されます。特例措置においては、5年経過後に会社を譲渡、合併、解散等した場合にはその時点の株式価値で税額を再計算して、もともとの猶予税額との差額が免除されます。

  

このように事業承継税制は非常に複雑で煩雑になっており、一つのミスが取り消し事由に直結します。

税額は一旦猶予ができたとしてもその後、後継者は、納税猶予の取り消し事由にならないように非常に色々な制約を受けながら事業を行う必要があり、また、猶予期間中は常に煩雑な手続きを行う必要があります。

 

従って、事業承継税制の適用を受けるためにはそれなりの覚悟を持って信頼できる専門家と共に慎重に進める必要があるものと考えます。

 

私どもではこれまでの知見から、豊富な税務プランニングを有しており、皆様それぞれの状況にあった最適なプランニング案(相対的に否認リスクが低いと思われるもの)をご紹介させて頂きます。

貴社のお力になれることを確信しておりますので、是非シーズ税理士法人までご相談ください。

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